きっかけ
KBDFanで売っているDZ60というPCBがあります。このキーボードは筆者お気に入りのスプリットスペースの配列ができるため長年利用してきました。
ところが、最近になって販売しなくなり入手困難となりました。
これをきっかけに、DZ60のスプリットスペースを再現しつつ、自分好みにカスタマイズしたキーボードを作りたいと思いました。

構想
最初のキーボード設計となるので、あまり欲望を詰め込まず以下を実現することにしました。
- スプリットスペース(親指で押せる修飾キーがたくさん)
- ロウスタッガード(オーソリニアやカラムスタッガードはNとVの位置がどうしても馴染めず筆者には日用使いできません)
- スタビライザーを利用しない2u未満のキーのみで構成(重要。スタビライザーで地獄を見たため。以下過去記事参照。)
それらを反映したレイアウトがこちらです。親指で押すキーは1.25uにして窮屈にならないように、その他は1uでまとめました。

個人的には右下のMenu/Ctrl/L3/Shiftあたりは全く使わないのですが、レイアウトが平行四辺形になって面白そうということでとりあえずつけてみました。
最終的にキー数が63ということで、KR63と名付けました。(わたしがカエルが好きなのでKaeRuです。それ以外に特に意味はない)
設計
一番難関と思われる設計作業ですが、先人のレクチャー本などなどによって簡単に行うことができました。以下紹介するまでもない有名本ですが私が参照した本です。これから作られる方はぜひご参照ください。
全般の説明はそれらの本や他のWebページにお委ねして、ここでは自分が気にした点を中心に記載します。とりわけPCB設計は奥が深すぎて気にすれば気にするほど先が見えなくなってきます。ある程度の割り切りは必要そうだと思いました。。。
線幅
「0.1mmとか0.3mmってすごい細くない?」なんか細すぎて切れると嫌だと思い、初心者のビビリ発動でとありえず全部0.5mmにしました。このあたり発注する企業によって最小幅が変わるそうなので、あらかじめ調べておいたほうが良いです。Elecrowなら0.15mmでした。この辺り、後述のデザインルールで最初からKiCADに設定しておいたほうが良さそうです。
(後ほど調べたところ、デジタル回路の信号線は0.15-0.2mm程度で行けるとのことです。次からそうしよう。参考:【基板設計】パターン幅とビア径の決め方 | アナデジ太郎の回路設計)

配線
「30mm以上のパターンは曲げを入れる | ノイズ対策.com」によれば、一直線の長い配線は断線の観点から避けた方が良いとのことでした。ということで、うねうねさせました。が、いろいろなPCBを見ているとまっすぐな配線してるものもあるしあんまり気にしなくても良いんですかね。。。一応できることはやっておきましょう。
ベタのグランドもやる方とそうでない方がいらっしゃるみたいですが、ノイズの観点ではやっておくに越したことはなさそうなので、入れてみました。「配置→塗りつぶしゾーンを追加、編集→すべてのゾーンを塗りつぶし」
ティアドロップも同様です。「ツール→ティアドロップの追加」。いずれもKiCADは自動でやってくれて感動しました。

部品位置
これは組立時に発覚した改善点です。ダイオードとスイッチのソケットの位置ですが、垂直方向で配置するとハンダ付けがちょっと面倒でした。。。どっちかをつけようとするとどっちかが邪魔になります。そこまで問題になるほどではないですが、並行方向が良いと思いました。が、これはこれで配線が面倒そう。。。

シルク(フットプリント)
Gitで配布されているスイッチソケットのフットプリントを使うと「ハンダマスクでシルクスクリーンが切り取られる」という警告が大量発生します。シルクが重なっているということだけなので問題はなさそうです。ただ、私はシルクするほどでも無いのかなということでとりあえずフットプリントを編集してシルクをすべて削除しました。


「フットプリントのプロパティ」から、「フットプリントを編集」編集画面でシルクスクリーンをすべて削除します。

シルク(基盤文字入れ)
Elecrowの最小の文字高さが0.8mmです。小さめな文字は案外違反しがちなので気をつけましょう。
KiCADではこういった制約を「ファイル→基盤の設定→デザインルール」から設定できることを設計後に知りました。。。プロジェクト作成直後に配線幅とか色々設定しておいたほうが良さそうですね。

発注前確認
発注前にすべてのファイルをチェックして、穴位置や外形がズレていないか確認すると安心できます。


ドリルのガーバーデータだけは別に出力するので放り込み忘れに注意でした。
発注
Elecrowで発注します。後述のアクリルカットも利用したかったため。
私の発注時は発注画面のプレビューがぶっ壊れて表示されて少し不安でしたが、結果はオーライでした。あくまでもプレビューなのでしょう。
基本はデフォルトですが、「HASL」だけ「HASL Lead Free(無鉛はんだ)」を選びました。国によっては鉛など使ってはいけないらしいという情報を入手し初心者なりに気をつけて見ました(日本以外で使う予定ないけど)
アクリルは小さいこともあり材料費より安いんじゃないかという脅威の価格でした。アクリル発注後、KiCADで出したデータが壊れていたからPDFでデータを送ってほしい旨の連絡がありました。こちらの環境では正常表示されていたこともあり、環境依存かもしれません。はじめからPDFで送った方が問題なさそうです。
ShippingはOCS/ANAにしました。価格的には低価格帯の一番上といった感じです。ロストが怖いのであまり安いのは避けたほうがよさそうというのと、やはり日系安心だよねということで。PCBやアクリルすべてカートに入れて一括で配送です。配送費低減。
発注してから10日ほどでやってきました。




組み立て・完成
KR-63向けのファームを作成します。
シンプルなキーボードのため、不要な機能はすべてOFFにして、ROW, COLUMの定義をいれるだけです。

その他、若干Layoutの書き方が難しいと思いました。
謎の入れ子構造と、(公式によると、複数レイアウトを定義できるようです)

最下段の1.25uをwで指定しつつ、その分xを増やしていく点です。

後はpromicroにファームを焼いて、はんだ付けするのみです。
初めての配線ミス等々で動かないことを危惧していましたが、問題なく無事動作できました!


届いて気づいたのですが、アクリルを「Matte Transparent (P422)」で発注したのですが思ったより透明じゃなかった。。。(今更発注画面の下に色見本があるのに気づきました。注文する方は事前確認を!)
が、Pro Microが光っているとクリオネみたいに見えて頑張って動いてる感が出て良いかなと思いました。

次回に向けて
今回初めて作ったものをrev.0としたので今年はrev.1を作れるようさらなる沼にハマっていきたいと思います。rev.1では以下のいずれかでも実施できればと思っています。
- アクリル加工にびびって、なるべく細いパーツを作らないようにしてみましたが、もう少し細かく細部までカバーできるようにする。
- レイアウトで少し使いにくいと思った点を改善。「!」を左手のShiftと左手の中指で入力するくせがあり、その時だけ左Shiftが1uだとスカるとか、バックスペースと左右の矢印は修飾キー無しで使いたいとか。。。
- PCBAでチップを基盤実装と言う夢。
- LowProfileに対応してさらに薄く。
- ケースを何とかして作ってみたい。
- G、Hにむけてキーボード全体が山となるような傾斜をつけたい。一体型だと厳しそうなので、分割してフラットケーブルで繋いでみるのも面白そう。(TRRSケーブルは食わず嫌い)
データ
稚拙ながらKiCADのデータ、QMKの設定をGithubにおいておきます。少しでも参考になれば幸いです!






